クロスライセンス契約について
こがです。
去年のニュースなんですが、以下のニュースがありました。
ニュース - SamsungとGoogle、世界規模の特許クロスライセンス契約を締結:ITpro
これ自体は、簡潔にいうと、ios vs. android戦争においてandroid陣営の同盟協定だと思うのですが、今回は”クロスライセンス”について記事にしたいと思います。
そもそもクロスライセンスとは
クロスライセンスについて調べてみると、以下のように説明してくれているページがあります。
内容を抜粋すると、
2つまたは複数の企業等が、自らの持つ特許権等の知的財産権の行使を互いに許諾(ライセンス)すること、またはそのための契約。一般には自らの持つ知的財産権を利用して、実施・使用許諾料を(契約によるが)払わずに必要な知的財産権を利用できるメリットがある。
といった記述がなされおり、通常、他社の特許を利用する際は、特許を保有する会社に対してお金を払う必要があるんだけど、かわりに自社の特許の利用を許すことで、支出を減らすということです。
実際の事例
クロスライセンス契約は、頻繁に結ばれているらしいです。
↓の記事で事例が紹介されています。
表1 クロスライセンス契約の事例 |
|||
No. | 契約年月 | 契約を締結した企業 | 対象分野 |
1 | 2001年1月 |
マイクロプロセッサの接続仕様など |
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2 | 2001年5月 |
両社の技術全般 |
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3 | 2002年4月 |
インテル/インターグラフ |
クリッパの技術など |
4 | 2002年7月 |
EMC/ヒューレット・パッカード |
ストレージ管理のAPI |
5 | 2002年9月 |
ヒューレット・パッカード/日立製作所 |
ストレージ管理のAPI |
6 | 2003年4月 |
日立製作所/EMC |
ストレージ技術、ストレージ管理のAPI |
7 | 2003年6月 |
ソニー/サンディスク |
メモリ・スティック |
8 | 2004年4月 |
マイクロソフト/サン・マイクロシステムズ |
両社の技術全般 |
9 | 2004年4月 |
青紫色レーザーダイオード |
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10 | 2004年6月 | ||
11 | 2004年11月 |
マイクロプロセッサの接続仕様など |
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12 | 2004年12月 | ||
13 | 2005年1月 |
ヒューレット・パッカード/インターグラフ |
クリッパの技術など |
頻繁に結ばれる背景には、紛争や法廷闘争の解決の手段として利用されるケースが多いようです。訴えられたら、原告側が自社の特許を侵害してないか調べたりするというかたちみたいです。
クロスライセンスにはメリット、デメリット両方が存在していて、
メリットとしては、単なる特許の実施権取得の契約に比べて、他社の特許を無償、または安い対価で使えることがあります。また、包括的なクロスライセンス契約を何社もと締結することにより、製品開発の自由度を確保し、訴訟を回避することができます。
一方、デメリットとしては、自社の特許を安い対価で供与させられる可能性があります。そして、競合相手を強化するおそれもあります。
例えば、IBMは自社のパソコンの技術をクロスライセンスで他社に供与することにより、それを業界標準にすることに成功しましたが、その結果、世界中で互換製品が作られるようになり、結局IBMは、2004年にパソコン事業から撤退することにしました。
という感じらしいです。
諸刃の剣かとは思いますが、奥深い世界ですね。
法務部の人たちは、後々特許を取得しておいたほうが後々有利になるかどうかを想定しながらポートフォリオを描いていたりするので、おもしろい世界だなと思いました。
もし今特許取得の業務を進めている人がいたら、それがあなたの会社の将来を救うかも?
また特許や著作権、商標といったあたりについて詳しく書いてみたいと思います。
では。
契約書で定める「賠償責任制限」範囲外となる「重過失」とは。〜ミサワ(unico)クレジットカード情報漏えい事件判決より〜
こんにちは。さとうです。
東京地判平成26年1月23日判時2221号71頁(SOFTIC 判例ゼミ 2014-5 2014.11.13)に掲載された判決が、SI経営者やSEたちに衝撃を与えています。
自分も、正直びっくりしました。
ある判決とは、ミサワ(unico)のクレジットカード情報を含む、個人情報漏洩事件の責任を巡ってのものです。
この件が広く知られることになったきっかけは、北大・北村教授のブログ「privacy:個人情報漏洩で脆弱なシステムの責任をソフトメーカーに問う事例(追記あり)」と、それを追っかけた徳丸浩センセイのブログ「SQLインジェクション対策もれの責任を開発会社に問う判決」。
この判決が衝撃を与えたのは、契約書に書かれた損害賠償の上限が、無効になる場合もある。という点。今回、ミサワと開発会社の契約書にも、以下の文言が入っていたんです;
第29条〔損害賠償〕 乙が委託業務に関連して,乙又は乙の技術者の故意又は過失により,甲若しくは 甲の顧客又はその他の第三者に損害を及ぼした時は,乙はその損害について,甲若しくは甲 の顧客又はその他の第三者に対し賠償の責を負うものとする。(1項) 前項の場合,乙は個別契約に定める契約金額の範囲内において損害賠償を支払う ものとする。(2項)
これ、SEならよく目にする条文ではないでしょうか。SIerが、自分たちの受託対価以上の賠償責任を負わないようにする条文。これまで、発注者と受注者のあいだで「落とし所」としてよく使われてきたフレーズですよね。
徳丸センセイのブログに詳しいんですが、今回;
- 損害賠償責任制限自体については認める
- 契約書に明記はないが、故意あるいは重過失に起因する損害については責任制限の範囲外とする
- 仕様書に記載はないがSQLインジェクション対策を怠ったことは重過失である
- よって今回の事案は損害賠償責任制限には該当しない
という判断が下されているんです。
今回は、SQLインジェクションが問題になっていますが。これはつまり、SQLインジェクション以外にも、発注側が「重過失」性を証明できれば、契約書に明記された上限以上の責任を、開発会社に負わせることが可能だと、裁判所が認めたのです。
ちなみに、今回SQLインジェクションへの対策を行わなかったのが「重過失」だと認められた理由は、IPAの注意喚起が大きな影響を及ぼしているようです。以下、判例の抜粋;
(ア) 前提事実のとおり,被告は,平成21年2月4日に本件システム発注契約 を締結して本件システムの発注を受けたのであるから,その当時の技術水準に沿ったセキュ リティ対策を施したプログラ厶を提供することが黙示的に合意されていたと認められる。そ して,本件システムでは,金種指定詳細化以前にも,顧客の個人情報を本件データベースに 保存する設定となっていたことからすれば,被告は,当該個人情報の漏洩を防ぐために必要 なセキュリティ対策を施したプログラムを提供すべき債務を負っていたと解すべきである。 そこで検討するに,証拠(甲14,25,29)によれば,経済産業省は,平 成18年2月20日,「個人情報保護法に基づく個人データの安全管理措置の徹底に係る注 意喚起」と題する文書において,SQLインジェクション攻撃によってデータベース内の大 量の個人データが流出する事案が相次いで発生していることから,独立行政法人情報処理推 進機構(以下「IPA」という。)が紹介するSQLインジェクション対策の措置を重点的 に実施することを求める旨の注意喚起をしていたこと,IPAは,平成19年4月,「大企 業・中堅企業の情報システムのセキュリティ対策~脅威と対策」と題する文書において,ウ ェブアプリケーションに対する代表的な攻撃手法としてSQLインジェクション攻撃を挙げ, SQL文の組み立てにバインド機構を使用し,又はSQL文を構成する全ての変数に対しエ スケープ処理を行うこと等により,SQLインジェクション対策をすることが必要である旨 を明示していたことが認められ,これらの事実に照らすと,被告は,平成21年2月4日の 本件システム発注契約締結時点において,本件データベースから顧客の個人情報が漏洩する ことを防止するために,SQLインジェクション対策として,バインド機構の使用又はエス ケープ処理を施したプログラムを提供すべき債務を負っていたということができる。 そうすると,本件ウェブアプリケーションにおいて,バインド機構の使用及び エスケープ処理のいずれも行われていなかった部分があることは前記2のとおりであるから, 被告は上記債務を履行しなかったのであり,債務不履行1の責任を負うと認められる。
IPAの情報を、これまで以上にチェックしなければ!と思いました。
杉本有美さんが2000万円請求した件
うえだです。
今日は、契約書を作成しなくて痛い目にあったニュースを勉強します。
最初読んだとき、事実関係がよくわかりませんでした。誰が悪役で、誰がヒーロー(ヒロイン)なの?っていう独善的な目線で考えてしまいました。現実世界はハリウッド映画のように分かりやすくはないものですね。
そこで、双方の言い分を整理してみました。
前事務所の言い分
「前事務所」は2年間の専属契約更新を行ったにもかかわらず、1年で独立していった事に対して怒っています。そのため、補償金として1000万円の支払いを求めています。
杉本有美さんと現事務所の言い分
一方、彼女たちは専属契約の2年間更新を否定し、自動更新であったと主張しています。そして、自動更新後1年たった2012年3月に新事務所へ移籍しています。しかし、前事務所での4年間の専属契約中のお仕事で未払いのギャラが2000万円あり、それを支払ってもらう請求を行っています。
なぜ、こんな問題が発生したのか
口頭での契約しかしておらず、契約書を作成していないからではないでしょうか。前事務所の言い分にしても、2年間の延長契約を結んだが書面には落としていないとのことです。杉本さんの言い分にしても、こういう大事な契約を自動更新と認識するのは危険なのではないでしょうか。さらに、2011年度は自動更新で2012年度は自動更新されないという言い分は通じるのでしょうか。(期限付き自動更新ってあるんですか?)
まとめ
双方とも、こういった大事な話はちゃんと契約書を作成することが大事ですね。口頭での約束は、仲違いした時に本当に悲惨なことになります。
なにやら優等生っぽいまとめになりましたが、今回は以上です。
特商法の見直し
こがです。
先日、ニュースで、↓のようなニュースが出ていました。
特商法の見直し本格検討へ/虚偽誇大広告による契約の取消権も議論 | 行政団体 | 日本ネット経済新聞 | 日流ウェブ
特商法って何?と思って調べてみたら、平たく言うと、モラルのない営業活動が行われた品目や売り方について、規制をかけたり、被害者を守るための法律なんですね。
それにしても、かなりの勢いで改定されていて、
- 2.3 昭和59年改正
- 2.4 昭和63年改正
- 2.5 平成3年政令改正
- 2.6 平成8年改正
- 2.7 平成11年改正
- 2.8 平成12年改正
- 2.9 平成14年改正
- 2.10 平成16年改正
- 2.11 平成20年改正
時代に則して改定が加わっているんですね。
中身を見てみると、 古くは訪問販売や、マルチ商法、通信販売といった、
その時代時代で、なにかしら問題になったものが対象になっていて、
今回はECや、SNSを利用した販売に対しての規制が検討されているようです。
たしかに時代が反映されていますね。
そのうちCtoCのやりとりとかも対象になって行きそうですね。
「男気契約」と日本。
さとうです。風がなければ、あたたかないい日が続きますね。日当たりのよい、窓辺にいると、この上ない幸せを感じてしまいます。ぬくぬく生きていきたい。でも、それだけしてたら、たまの「ぬくぬく」すら手の隙間からこぼれ落ちてしまいそう。それに、ずっとぬくぬくだけしてたら、きっと発狂して頭がおかしくなってしまうことでしょう。今日は月曜日。頑張って行きましょう。
さて。スポーツ紙や、ゴシップ誌の見出しは、その国の国民のメンタルをよく表していると思うのですが。先週飛び込んできたのはこれ;
どことなく違和感を感じる、この見出し。
黒田選手は自ら選択した決断に対して示された契約書を見て、納得して、契約したのではないか?
反対に、内藤選手は、ふがいない結果に対し、受け止めざるをえないと覚悟したから「契約書を見ず(無条件で)」契約したのではないか?
内藤選手が、黒田選手を参照するのは、ただのこぢつけではないのか?
・・・と、まじめに取り上げるネタでもないのだけど、ついつい。「契約書を見ず」っていうのが「男気」だって言われることに違和感を感じて、取り上げてしまいました。
一般法とグローバル変数
うえだです。
ローカル変数とグローバル変数。ご存知ですよね。 プログラマにとって変数のスコープは重要です。
法律や契約書などを読むときにもスコープを意識する必要があります。 今日は、法律のスコープの話です。
一般法と特別法
一般法(いっぱんほう)とは、適用対象がより広い法のことを、特別法(とくべつほう)とは、適用対象がより特定されている法のことをいう。両者の区別は相対的である。
ざっくり言うと、一般法とはグローバル変数で、特別法とはローカル変数です。 ローカル変数がある場合は、ローカル変数が優先されますし、ない場合はグローバル変数が呼ばれます。
契約解除のための一般的な手続きは、民法に規定されています。と、同時に特定商取引法にも記載されています。この場合、特定商取引法は特別法として扱われ、特定の条件の時(訪問販売等)のみ有効となります。
<html> <head> </head> <body> <script type="text/javascript" language="javascript"> document.open(); var keiyaku_kaijo = "民法"; document.write(keiyaku_kaijo + "<br />"); // > 民法 (function(){//訪問販売 var keiyaku_kaijo = "特定商取引法"; document.write(keiyaku_kaijo + "<br />"); // > 特定商取引法 })(); document.write(keiyaku_kaijo + "<br />"); // > 民法 document.close(); </script> </body> </html>
こんなイメージでしょうか。
.addEventListener('訪問販売', function(){})
みたいなコードにしたかったんですが、出来るんでしょうか。 教えてください。
法律のスコープの見分け方
JavaScriptのコードであれば、スコープチェーンとかクロージャーとかのキーワードで検索していけば、どこの変数が呼ばれているのかわかります。 では、法律の場合どうやって見分ければいいのでしょうか。
見分け方1:条文に一般法と明記してある。
第一条 行政事件訴訟については、他の法律に特別の定めがある場合を除くほか、この法律の定めるところによる。
このように、条文に一般法であることとその適用範囲が明記されていることがあります。 わかりやすいですね。
見分け方2:条文に特別法と明記してある。
第十一条 法第九十四条第一項 又は第二項 の規定により厚生年金保険の標準報酬月額を改定された厚生年金保険の被保険者が厚生年金基金の加入員である場合においては、当該標準報酬月額を改定された月に係る当該加入員の標準給与の改定の方法については、厚生年金基金令第十八条の規定にかかわらず、法第九十四条 の規定の例によることができる。
東日本大震災に対処するための特別の財政援助及び助成に関する法律の厚生労働省関係規定の施行等に関する政令
規定にかかわらずっていうあたりが、特別法感を醸していますね。いいですね。
見分け方3:感じる
1 年齢ハ出生ノ日ヨリ之ヲ起算ス
より起算する、から起算してとかの表現は初日不算入の原則の例外(特別法)として扱われます。
感じて、覚えるしかなさそうです。
まとめ
民法に書かれている「初日不算入の原則」が一般的な契約書にも影響してくる理由がわかりませんでした。民法のスコープが謎でした。 しかし、今回の勉強を通じてやっぱり謎でした。
芸能界と契約
こがです。
こんばんわ。
先日、PV制作の仕事に関わることがあったのですが、「俳優さんとの契約の都合上、PVの公開期間はXXですよー。公開期間を延ばしたいなら契約延長になって追加費用がかかりますよー」というようなやりとりがありました。
言われてみれば確かにそうで。俳優からすると、一旦ヤンキーの役をやって、それが無期限で使用されたとすると、一生ヤンキーの人から脱却できなくなるので、営業妨害になっちゃいますよね。
初めてのこともあって、考慮が漏れてたのは反省+とても勉強になりました。
それで、上記の肖像権に限らず、芸能界ってもめ事も含め、契約に関するシーン多いなーということに気づき、今日は「芸能界と契約」という切り口でブログを書きたいと思います。
労務を供給する契約について
以前にも請負・委任について書きましたが、一般的には「雇用」、「請負」、「委任」のどれかに属するはずですが、タレントさんの場合、「マネジメント契約」みたいなものも存在します。
マネジメント契約については依然うえださんがエントリーを書いていましたね。
マネジメント契約の美容整形手術禁止条項について - SEが契約を勉強してみたブログ
それ以外にも、AKBを例に雇用、請負、委任について記載している記事も見つけました。
雇用・委任・請負 -AKBは「芸能界のリクルート」だった:PRESIDENT Online - プレジデント
さまざまな契約体系とはいえ、芸能界だとこのあたりの契約でトラブルになることも多いようで、事例をみてみると、「労働者」として認められるか否か?というのが多いようです。いわゆる「みなし雇用」のことかなーと理解しています。
広告主と事務所の契約
冒頭でふれた話題はまさにここにあたります。
ちょっとしらべてみると、広告出演契約書なるものが存在するらしく、
前述の使用期間だけじゃなく、出演する広告媒体の範囲や競合商品への出演へのケアなど、いろいろ考慮しなきゃいけない項目があるのだなーと思いました。
タレント等の広告出演契約書 | 著作権・契約書作成なら藤枝法務事務所
ひとまず今日はここまで。
ただ、深堀するといろいろ面白そうな知見が得られそうなので、今後も継続して芸能界ネタは扱っていきたいと思います。
では