SEが契約を勉強してみたブログ

クラウド勉強会で知り合ったSE3人が法律、契約の話題で盛り上がり、勉強がてらブログはじめてみた。

業務委託契約書と下請法の、オトナな関係。

ソフトウェア開発を受託する際、業務委託契約書を交わす事が多いと思います。

 

今日は、業務委託契約書を交わす意義について、下請法の観点から考えてみたいと思います。

 

 

まず前提として。

 

契約は、双方の合意があれば、書面に残さなくても成立する。というルールがあります。(参考:契約 - Wikipedia

 

てことは、立場の強い発注元が、条件を曖昧なままにして、下請け業者に業務発注する。という危険が発生します。

 

そこで登場するのが、下請法。(参考:下請法:公正取引委員会

 

自分の所属する(受託業務をする)会社の資本金が3億円以上の人には関係ない法律です。

 

が、そうでない人には関係するかもしれない法律です。

 

下の表は、ソフトウェア開発の受発注において、下請法が適用されるかどうかを判断するための早見表です。

 

http://www.jftc.go.jp/shitauke/shitaukegaiyo/gaiyo.images/gaiyo_ill_01.gif

 ※引用)下請法の概要:公正取引委員会

 

 

下請法では、発注元から先に、以下の義務が発生します。

 

義務概要
書面の交付義務 発注の際は,直ちに3条書面を交付すること。
支払期日を定める義務 下請代金の支払期日を給付の受領後60日以内に定めること。
書類の作成・保存義務 下請取引の内容を記載した書類を作成し,2年間保存すること。
遅延利息の支払義務 支払が遅延した場合は遅延利息を支払うこと。

※引用)親事業者の義務:公正取引委員会

 

この中で;

  1. 書面の交付義務
  2. 書類の作成・保存義務

あたりが、業務委託契約書に関係ありそうな感じです。

 

(1) 書面の交付義務は『下請代金支払遅延等防止法第3条の書面の記載事項等に関する規則:公正取引委員会』に詳細が記載されています;

第1条 下請代金支払遅延等防止法(以下「法」という。)第3条の書面には,次に掲げる事項を明確に記載しなければならない。

一 親事業者及び下請事業者の商号,名称又は事業者別に付された番号,記号その他の符号であって親事業者及び下請事業者を識別できるもの

二 製造委託,修理委託,情報成果物作成委託又は役務提供委託(以下「製造委託等」という。)をした日,下請事業者の給付(役務提供委託の場合は,提供される役務。以下同じ。)の内容並びにその給付を受領する期日(役務提供委託の場合は,下請事業者が委託を受けた役務を提供する期日(期間を定めて提供を委託するものにあっては,当該期間))及び場所

三 下請事業者の給付の内容について検査をする場合は,その検査を完了する期日

四 下請代金の額及び支払期日

五 下請代金の全部又は一部の支払につき手形を交付する場合は,その手形の金額及び満期

六 下請代金の全部又は一部の支払につき,親事業者,下請事業者及び金融機関の間の約定に基づき,下請事業者が債権譲渡担保方式(下請事業者が,下請代金の額に相当する下請代金債権を担保として,金融機関から当該下請代金の額に相当する金銭の貸付けを受ける方式)又はファクタリング方式(下請事業者が,下請代金の額に相当する下請代金債権を金融機関に譲渡することにより,当該金融機関から当該下請代金の額に相当する金銭の支払を受ける方式)若しくは併存的債務引受方式(下請事業者が,下請代金の額に相当する下請代金債務を親事業者と共に負った金融機関から,当該下請代金の額に相当する金銭の支払を受ける方式)により金融機関から当該下請代金の額に相当する金銭の貸付け又は支払を受けることができることとする場合は,次に掲げる事項 

 

(2) 書類の作成・保存義務は『下請代金支払遅延等防止法第5条の書類又は電磁的記録の作成及び保存に関する規則:公正取引委員会』に詳細が書かれています;

第1条 下請代金支払遅延等防止法(以下「法」という。)第5条の書類又は電磁的記録には,次に掲げる事項を明確に記載し又は記録しなければならない。

一 下請事業者の商号,名称又は事業者別に付された番号,記号その他の符号であって下請事業者を識別できるもの

二 製造委託,修理委託,情報成果物作成委託又は役務提供委託(以下「製造委託等」という。)をした日,下請事業者の給付(役務提供委託の場合は,役務の提供。以下同じ。)の内容及びその給付を受領する期日(役務提供委託の場合は,下請事業者がその委託を受けた役務の提供をする期日(期間を定めて提供を委託するものにあっては,当該期間),並びに受領した給付の内容及びその給付を受領した日(役務提供委託の場合は,下請事業者からその役務が提供された日(期間を定めて提供されたものにあっては,当該期間))

三 下請事業者の給付の内容について検査をした場合は,その検査を完了した日,検査の結果及び検査に合格しなかった給付の取扱い

四 下請事業者の給付の内容を変更させ,又は給付の受領後に(役務提供委託の場合は,下請事業者がその委託を受けた役務の提供をした後に)給付をやり直させた場合には,その内容及びその理由

五 下請代金の額及び支払期日並びにその額に変更があった場合は増減額及びその理由

六 支払った下請代金の額,支払った日及び支払手段

七 下請代金の全部又は一部の支払につき手形を交付した場合は,その手形の金額,手形を交付した日及び手形の満期

八 下請代金の全部又は一部の支払につき,親事業者,下請事業者及び金融機関の間の約定に基づき,下請事業者が債権譲渡担保方式(下請事業者が,下請代金の額に相当する下請代金債権を担保として,金融機関から当該下請代金の額に相当する金銭の貸付けを受ける方式)又はファクタリング方式(下請事業者が,下請代金の額に相当する下請代金債権を譲渡することにより,当該金融機関から当該下請代金の額に相当する金銭の支払を受ける方式)若しくは併存的債務引受方式(下請事業者が,下請代金の額に相当する下請代金債務を親事業者と共に負った金融機関から,当該下請代金の額に相当する金銭の支払を受ける方式)により金融機関から当該下請代金の額に相当する金銭の貸付け又は支払を受けることができることとした場合は,次に掲げる事項

イ 当該金融機関から貸付け又は支払を受けることができることとした額及び期間の始期

ロ 当該下請代金債権又は当該下請代金債務の額に相当する金銭を当該金融機関に支払った日

九 下請代金の全部又は一部の支払につき、親事業者及び下請事業者が電子記録債権(電子記録債権法(平成19年法律第102号)第2条第1項に規定する電子記録債権をいう。以下同じ。)の発生記録(電子記録債権法第15条に規定する発生記録をいう。)をし又は譲渡記録(電子記録債権法第17条に規定する譲渡記録をいう。)をした場合は、次に掲げる事項

イ 当該電子記録債権の額

ロ 下請事業者が下請代金の支払を受けることができることとした期間の始期

ハ 電子記録債権法第16条第1項第2号に規定する当該電子記録債権の支払期日

十 製造委託等に関し原材料等を親事業者から購入させた場合は,その品名,数量,対価及び引き渡しの日並びに決済をした日及び決済の方法

十一 下請代金の一部を支払い又は下請代金から原材料等の対価の全部若しくは一部を控除した場合は,その後の下請代金の残額

十二 遅延利息を支払った場合は,その遅延利息の額及び遅延利息を支払った日

 

 (2)については、業務が終了した後の事なので、契約書が関連するのは(1)なのだということがわかります。

 

(1)の「3条書面」をみてみると、契約日とか支払金額とか、支払期日(=本来、発注元にとっては曖昧にしておいて損のない項目)について「義務」とされているものの、肝心の「中身(=本来、発注元がはっきりさせておきたいこと)」については一切「義務」とされていません。

 

「中身(業務内容/権利の帰属/瑕疵担保など)」を、どこにも定義してないのに、期日とか金額だけを決めることなんて、できるんでしょうか・・・。できないですよね。そんなことしたら、ただのお人好しです。会社、潰れます。クライアントが、そんなことするはずありませんw

 

ってことで「業務委託契約書」の出番!です。

 

発注元の希望(要望)をあれやこれやと盛り込んで、そこに「3条書面」の内容を加えれば、発注元は発注先に自分たち(発注元)の希望(要望)を主張しやすくなります。

 

どうせやんないとならない「3条書面」の義務をクリアするのと同時に、自分たちの希望(要望)を伝えられる!って、業務委託契約書って合理的。

 

念のため確認ですが。3条書面の内容をすべて含んだ契約書等を作成すれば、3条書面を別途作成する必要が無いというのは、間違いないようです(↓)

http://www.kanto.meti.go.jp/seisaku/chusho/shitauke/shomensankou.pdf

 

以上