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FC2家宅捜索その後。わいせつ動画の頒布とは

2014年10月にアダルトサイトFC2の実質的な運営会社とされるホームページシステム社に、「わいせつ動画配信の疑い」があるとして家宅捜索が入りました。



その後、どうなったのか気になって調べてみました。

しかし、一向に起訴されたというニュースは見つからりませんでした。

 

ということで、FC2の事件について個人的な見解を述べてみようと思います。というのも、私の仕事はシステムエンジニアなので、作ったシステムの上のコンテンツによっては、自分が罪を犯してしまう可能性があると思っています。

そこで、FC2の件をきっかけとして調べる次第です。

 

FC2事件とは?

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FC2動画を運営する米国法人「FC2」には、多数のわいせつ動画や著作権法違反の動画がアップロードされており、日本人が多数利用していました。今までユーザーの中では、アメリカのサーバー上に有り、日本の法律が適用されないという認識が一般的でした。

 

何が問題なのか? 

(わいせつ物頒布等)
第百七十五条  わいせつな文書、図画、電磁的記録に係る記録媒体その他の物を頒布し、又は公然と陳列した者は、二年以下の懲役若しくは二百五十万円以下の罰金若しくは科料に処し、又は懲役及び罰金を併科する。電気通信の送信によりわいせつな電磁的記録その他の記録を頒布した者も、同様とする。
2  有償で頒布する目的で、前項の物を所持し、又は同項の電磁的記録を保管した者も、同項と同様とする。

刑法175条

刑法175条では、わいせつなモノを頒布してはいけないと書いてあります。FC2の件は、これに該当する可能性が有ります。しかし、刑法は日本の法律です。FC2のサーバーはアメリカにあります。そのため、刑法175条が適用されるかどうかが争点となってきます。(アメリカのわいせつ物頒布関連法律は調べてません。。。。。)

 

関連判例

こういった場合、裁判所はどういった判断を下すのでしょうか。似たような判例を見つけたので紹介します。

平成24年(う)第2197号 わいせつ電磁的記録等送信頒布,わい
せつ電磁的記録有償頒布目的保管被告事件
平成25年2月22日 東京高等裁判所第11刑事部判決

http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/473/083473_hanrei.pdf

には、頒布の意味が記されています。

 

刑法175条1項後段にいう「頒布」とは,不特定又は多数の者の記録媒体上に電磁的記録その他の記録を取得させることをいうところ,被告人らは,サーバコンピュータからダウンロードするという顧客らの行為を介してわいせつ動画等のデータファイルを顧客らのパソコン等の記録媒体上に取得させたものであり,顧客によるダウンロードは,被告人らサイト運営側に当初から計画されてインターネット上に組み込まれた,被告人らがわいせつな電磁的記録の送信を行うための手段にほかならない。被告人らは,この顧客によるダウンロードという行為を通じて顧客らにわいせつな電磁的記録を取得させるのであって,その行為は「頒布」の一部を構成するものと評価することができるから,被告人らは,刑法175条1項後段にいう「電気通信の送信によりわいせつな電磁的記録・・・を頒布した」というに妨げない。 

 ということです。つまるところ、サーバーがアメリカにあったとしても、日本国内のユーザーがダウンロード出来る現状は、頒布に当たります。とくに、FC2のプロモーションは日本向けに行われており、日本国内での頒布目的だと判断されています。

 

また、アメリカの法律/日本の法律どちらが適用されるかという問題に関しては

犯罪構成要件に該当する事実の一部が日本国内で発生していれば,刑法1条にいう国内犯として同法を適用することができると解されるところ,既にみたとおり,被告人らは日本国内における顧客のダウンロードという行為を介してわいせつ動画等のデータファイルを頒布したのであって,刑法175条1項後段の実行行為の一部が日本国内で行われていることに帰するから,被告人らの犯罪行為は,刑法1条1項にいう国内犯として処罰することができる。 

らしいです。

で、FC2はどうなるの?

FC2自体は、紹介した判例と似ていると思います。そのため、日本の会社がアメリカのサーバーで日本人向けにサービス提供していたら、違法でしょう。

しかし、今回の場合はホームページシステム社という実質的な運営団体の存在が紹介した判例との違いです。起訴されたというニュースも見つからないので、ホームページシステム社の運用をすることで、法律問題を回避出来るのかもしれません。